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ヴェーダ
    
 古代インドの文明は、ハラッパやモヘンジョダロの遺跡で知られるインダス文明の時代にさかのぼります。インダス河流域に栄えたインダス文明を形作っていたのは、母系制のドラヴィダ民族などであると考えられています。紀元前1500年前後から、このインダス文明の地域に中央アジアやアフガニスタン出身のアーリア民族が侵入をはじめ、当初はパンジャブ地方に、そしてやがてガンジス河流域の森林地域に定住します。

 インドに定着したアーリア人によって前1200年前後に編纂されたと推定されるのが、インド最古の文献「リグ・ヴェーダ」です。「リグ・ヴェーダ」に引き続き、「サーマ・ヴェーダ」「ヤジュル・ヴェーダ」「アタルヴァ・ヴェーダ」など主要なヴェーダ文献も数百年間かけて編纂されました。

 ヴェーダとはもともと「知識」を意味する言葉で、古代インドの民族宗教であるバラモン教の聖典のことです。バラモンは古代アーリア民族の司祭階級で、子孫繁栄や息災、豊作や降雨などを祈願したさまざまな祭祀を執り行うことを通じ、神と関わりあうことができる聖なる存在とみなされていました。以下に代表的な4つのヴェーダ文献を紹介します。

・リグ・ヴェーダ…祭りの場に招いた神々を称えるための賛歌。ホートリー祭官に所属。
・サーマ・ヴェーダ…詞(大部分はリグ・ヴェーダによる)を旋律に乗せて歌うウドガートリ祭官に所属。
・ヤジュル・ヴェーダ…神へ捧げる供物を調えるなど祭祀を執り行っていたアドヴァリユ祭官に所属。黒ヤジュル・ヴェーダと白ヤジュル・ヴェーダの2種類ある。
・アタルヴァ・ヴェーダ…吉祥を願ったり他人を呪詛するための呪詞を集めたもの。ブラフマン祭官に所属。

 これら4種類のヴェーダのうち、アタルヴァ・ヴェーダ以外の3つのヴェーダが別格とされ、絶対的な権威を持っていました。呪術的な要素の強いアタルヴァ・ヴェーダには、他の3ヴェーダより遅れてヴェーダ文献としての地位を与えられたという経緯があります。このアタルヴァ・ヴェーダの中の医学に関する記述が抜き出されたものがアーユル・ヴェーダです。

 ヴェーダ文献は、それぞれサンヒター(本集)、ブラーフマナ (祭儀書)、 アーラニヤカ (森林書) 、ウパニシャッド (奥義書) の4つの部分から構成されます。しかし、通常「ヴェーダ」と言った場合、サンヒター(本集)を示します。

 ヴェーダは天啓を受けた古代インドのリシ(聖者)たちによって口述されたものであるため「天啓聖典(シュルティ)」と呼ばれ、成立後も長い間文字に著すことなく師から弟子に口伝で伝えられました。リシたちによって書かれた聖典は「伝承聖典(スムリティ)」と呼ばれ、「天啓聖典」とは区別されていたのです。   


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